3歳の時に発症した病気のせいで、定期的に採血検査をしなければならなくなった息子ケイ。
注射と同様に「大泣きするのは仕方がない」と思っていましたが、幼稚園を卒園し、小学生になっても採血を怖がっていました。
その日も、採血検査のために病院を訪れていたのですが……。
採血を担当してくださった検査技師さんが、暴れる息子にこんな風に声をかけてくださいました。
検査技師さんの言葉に従い、私たち親子はロビーに出ました。
そして私は、この検査がどれだけ重要か、この検査を一刻も早く受けたい人がどれだけいるか…ということを、改めて息子に言い聞かせました。
採血の痛みは怖いかもしれないけれど、ここは病院。大声で騒ぐ場所ではない。
なるべく分かりやすく冷静に説明し、1時間後にようやく納得した息子は、覚悟を決めたかのように番号札をとり、再び採血室へと向かったのです。
「君、6年生でしょ?」と言われたときは、大騒ぎしていたことに対してお叱りを受けるものと思いました。
でも、その時の検査技師さんは、息子に「大学病院の現実」を語ってくださいました。
後から考えてみると、医師不足と言われる社会問題と向き合い、また大学病院に対する理解を深めるにあたって、この時の言葉はとても重要な学びだったと感じています。
これ以降、息子は採血で騒ぐことはなくなりました。
検査も治療もすべて「自分のため」だと理解し、同時に周りのことも見ることができるようになったのです。
息子がネフローゼ症候群から解放されたのは、高校1年生の時。
長い長いお付き合いでしたが、いまでは全部いい思い出となっています。