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公開 2020年05月26日  

帝王切開はリスクが高い?経腟分娩との違いや、手術前に知っておきたいこと

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経腟分娩が難しいとき、赤ちゃんやお母さんを守るために選択される「帝王切開」。「経腟分娩に比べて帝王切開は楽だ」なんて言われることもありますが決してそんなことはなく、帝王切開も立派な出産方法の1つです。帝王切開で出産予定の人もそうでない人も、万が一に備えて帝王切開について知っておきましょう。


目次 帝王切開とは
どんな時に「帝王切開」になるの?
帝王切開の手術の流れ
緊急帝王切開って?
帝王切開のリスクについて
帝王切開後の回復期間
帝王切開後の育児
帝王切開の注意点
帝王切開は赤ちゃんとママの体を守るための方法

帝王切開とは

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帝王切開は、お母さんと赤ちゃんのどちらかまたは両方に何らかの問題が生じ、経腟分娩が難しいと判断された場合の出産方法です。

子宮にメスを入れ、医師の手で赤ちゃんを取り出します。

今では、5人に1人が帝王切開で赤ちゃんを出産しています。


どんな時に「帝王切開」になるの?

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帝王切開には、「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」の2種類あります。

この2つの大きな違いは、帝王切開を選択するタイミングです。

帝王切開というと、「予定帝王切開」を指すのが一般的です。

双子以上の多胎、子宮口の一部もしくは全部を胎盤がふさいでいる前置胎盤(ぜんちたいばん)、赤ちゃんの頭が何らかの原因で上にある逆子など、経腟分娩が難しいと事前にわかっている場合に行われます。

妊娠37週まで様子を見て、38週目に手術を行うことが多いようです。

また、「緊急帝王切開」は何らかの原因で赤ちゃんを急いで取り出さなければならない時に行われ、出産の途中や出産直前に手術が決まることもあります。


帝王切開の手術の流れ

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帝王切開は、どのような流れで行われるのでしょうか。

入院から手術前・手術・手術後・退院まで、タイミング別に解説しましょう。


入院


入院時には、入院に関する注意事項や手術の説明、血圧、脈拍、体温測定などをおこない、お母さんとおなかの赤ちゃんの健康状態チェックなどが行われます。

ちなみに、予定帝王切開の場合、入院は手術前日もしくは手術当日が一般的。

手術予定日の2週間前を目安に、血液検査、心電図、胸部X線写真などの手術前検査が行われ、予定通り手術可能かどうかを確認します。


手術前


麻酔の影響で誤嚥したり、手術後に腸管麻痺が出たりしないよう、食事は手術の6時間前までに済ませなければなりません。

水も、手術の2時間までしか飲めません。

また、手術の前には点滴や尿を排出するための細い管を入れる導尿(カテーテルの挿入)が行われます。


手術


準備が整ったら、いよいよ手術です。手術にかかる時間は全部で30〜60分ほど。

お腹にメスを入れてから5~10分ほどで赤ちゃんが誕生します。

手術の流れは次のとおりです。


1.麻酔…母体と赤ちゃんの様子を見ながら、硬膜外麻酔または脊髄麻酔(局所麻酔)か全身麻酔かが選択されます。局所麻酔の場合はお母さんの意識があるため、赤ちゃんの誕生をその場で確認することができます。

2.下腹部の切開…下腹部の皮膚を縦もしくは横に切開し、子宮を確認します。

3.赤ちゃんの誕生…子宮も切開し、お母さんのおなかの中から赤ちゃんを取り出します。帝王切開でも、局所麻酔でお母さんの意識があればカンガルーケア(母子早期接触)ができる場合もあります。

4.縫合…赤ちゃん誕生後は、胎盤を取り出してきれいにした子宮を縫い合わせ、手術用の縫合糸やステープラー、接着剤などを使ってお腹の傷を閉じます。

5.経過観察…手術室から回復室に移動し、術後の経過をチェックします。赤ちゃんもお母さんも特に問題がなければ赤ちゃんに触れることができます。


手術後


術後の経過がよければ、食事が食べられるようになり、ベッドの上で授乳を始めることができます。

血栓予防のため、早い段階から少しずつ体を動かしましょう。

お母さんは、赤ちゃんの体温測定やおむつ交換など、状況を見ながら少しずつ本格的なお世話を開始します。

お母さんの体調がよければシャワーも浴びられるようになります。

必要に応じて皮膚を縫合した糸やステープラーを外し、入院中から傷跡のケアも開始します。


退院


帝王切開の入院期間は、手術日(出産日)を0日として術後7日間が一般的です。

退院前の診察と保健指導を受け、問題がなければ退院します。

手術の傷の痛みもまだありますが、無理をしないよう過ごしましょう。


緊急帝王切開って?

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緊急帝王切開は、お母さんや赤ちゃんに危険が迫った状況で行われます。

もともと帝王切開を予定していた人が、手術日よりも早く破水したり、陣痛が来たりした場合にも緊急帝王切開になることが多いようです。

緊急帝王切開となる理由には、次のようなものがあります。

・胎児機能不全(たいじきのうふぜん)…何らかの原因でお腹の中の赤ちゃんが「正常ではない状態」になってしまうこと。実際には何の問題もない場合もあります。
・常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)…分娩の際に剥がれ落ちて排出されるべき胎盤が、何らかの原因で妊娠中や分娩前にはがれてしまうこと。
・臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)…臍帯が赤ちゃんより先に子宮から膣内へ出てしまうこと。
・妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)…妊娠中のお母さんに現れる高血圧のこと。重症化すれば尿蛋白やけいれん発作、脳出血など、お母さんの命に危険が及びます。また、胎盤がはがれて赤ちゃんに酸素がいきわたらなくなるなど、赤ちゃんも危険にさらされます。
・微弱陣痛(びじゃくじんつう)…陣痛が始まり分娩が開始したものの、陣痛の強さが弱くて発作の持続が短く、陣痛間隔が延びてしまって分娩が進行しない状態のこと。
・遷延分娩(せんえんぶんべん)…出産が長引いた状態のこと。
・回旋異常(かいせんいじょう)…子宮内の赤ちゃんが、何らかの原因でうまく廻旋できない状態のこと。分娩が長引いたり、止まってしまったりする可能性があります。


帝王切開のリスクについて

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お母さんと赤ちゃんを守るために選択される帝王切開ですが、次のようなリスクがある場合も。

・次に妊娠したとき、前置胎盤になったり子宮外妊娠をしたりする確率が上がる
・帝王切開を繰り返すと、癒着胎盤や膀胱損傷、子宮摘出のリスクが高くなる
・次の妊娠で普通分娩を選択することもできるが、子宮破裂のリスクがあがる

都合の良い日を選んで出産できるなどの理由で帝王切開が選ばれるケースもありますが、術後に重篤な合併症を発症する可能性もゼロではありません。

リスクも踏まえた上で出産方法を選択しましょう。


帝王切開後の回復期間

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経腟分娩でも帝王切開でも、出産によるダメージを回復するには時間がかかります。

しかし、経腟分娩に比べて帝王切開の回復はより時間がかかる傾向があります。

術後の麻酔が切れれば傷跡が痛み、傷も癒えないうちから赤ちゃんのお世話も始まります。

体に吸収されない糸を使用していれば抜糸も必要で、治癒の過程で傷跡が引っ張られたような痛みをともなう場合も。

手術でお腹を切った痕が回復するまでに4週間〜6週間と比較的長い期間を要するのが一般的です。


帝王切開後の育児

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帝王切開による出産の後、2~3日は傷が強く痛みます。

すぐにでも赤ちゃんのお世話に集中したいところですが、医師や助産師の適切なサポートを受け、無理せず過ごすようにしましょう。

体調が良ければ、授乳などの赤ちゃんのお世話を積極的に行ってください。

赤ちゃんが乳首を吸う刺激によって、子宮の回復が早まります。

また、退院後は無理をせず、産褥期は赤ちゃんと自分の身体のことを優先に考えるようにしましょう。


帝王切開の注意点

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出産後すぐに無理をすると回復に時間がかかってしまうことも。

家事などは家族にサポートをお願いして、できれば赤ちゃんの1ヶ月健診までは安静に過ごすようにしましょう。

家族や友人など、身近な人の協力が得られない場合は、自治体がおこなっている「産後ケア事業」などを活用するのがおすすめです。

また、帝王切開による次回妊娠時の子宮破裂リスクを考慮し、次の妊娠・出産までは最低でも1年は期間をあけるようにしましょう。


帝王切開は赤ちゃんとママの体を守るための方法

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帝王切開は、赤ちゃんとお母さんの命を守るための出産方法です。

経腟分娩か帝王切開かにこだわらず、赤ちゃんが元気に産まれてきてくれることを第一に考えましょう。

帝王切開を予定している人は、妊娠中から腹筋を大きく動かさないで咳をする練習や、おなかに負担をかけない体位変換の練習をしておくのもいいでしょう。


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