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公開 2020年01月22日  

母の心配をよそに。発達凸凹のわが子が運動会で見せた、まぶしい成長<第三回投稿コンテスト NO.62>

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発達がゆっくりな娘さんをもつ乃明(のあ)さん。
はじめて参加した幼稚園の運動会では、子どもの成長に「めまいがするほど」驚きの連続だったといいます。



9月の残暑厳しいスポーツ広場で、私は目眩がしていた。

暑さではなく感動で。


娘は3歳、幼稚園の年少組。

そもそも1歳半の頃から言葉が遅くて多動。「発達に凸凹がある」と言われていた。

どこへ出かけても、私の手を離れて走り回り、イヤイヤする時は、頭から地面にひっくり返ってギャン泣きし、食べ物の好き嫌いも多く、寝付きは最悪という手のかかりぶりだった。

2歳の頃から、区の発達支援プログラムに参加し、定期的に心理相談を受け、療育を検討しながら、とりあえず通常クラスで行ってみようとなったのは、3月の終わりだった。

4月に幼稚園へ入園したものの、5月の連休明けまで、毎朝20分は行きたくないと泣き、お迎えに行けば私の顔を見ただけで泣きと、とにかく泣いてばかりの娘が集団生活に慣れるか心配していた。

6月の担任との面談では、「マイペースながらもできることが増え、娘ちゃんなりに成長していますよ!」と先生に仰って頂きほっとしたものの、夏休みが明けたら、また毎朝行きたくないと泣くようになってしまい、心配の日々は続いた。

運動会の練習が始まってから、娘が聞かせてくれるのは、「今日はたくさん走った」、「ダンスが楽しかった」など断片的な話ばかりで、練習の詳細は分からなかった。

運動会といえば、大人数で統率の取れた動き、いつもは仲良く遊んでいるお友達とのレースなど、娘には難易度の高いことが要求される。

そんなことが、娘にできるようになるのか…。

運動会の間、自分の席に一人で座っていられるのかも心配だった。


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運動会の2週間前、予行練習が行われた。

私は運動会のサポート係だったので、娘を連れて、ドキドキしながらスポーツ広場へ向かった。

着いた途端「はい、皆はこっちですよ~」と先生の声が聞こえると、娘は当然のように観覧席へ向かった。

まずここで驚いた。

いつもなら、じっとしないで走り回る娘が、お友達と並んできちんと席に座っている。

先生に「おトイレ行く人は?」と聞かれたら、きちんと付いて行っている。

プロの教育って、なんてなんて素晴らしいの!と、驚きつつ、あまりの素晴らしさにうっとりしたのも束の間、どんどん予行は進み、心配していた娘のダンスが始まった。



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それを見て、私は自分の目を疑い、心配していたことを反省した。

娘は、ちゃんと列を作って歩いていた!

しかも列の先頭で!

ちゃんと止まって立つ位置も考えていた!


もう、目眩がした。くらくらした。

音楽が流れ始めたら、娘はニコニコと踊り始めた!

テンポや振り付けがずれたりしていたけど、誰よりも全開の笑顔で、手足をめいっぱい伸ばして、全力で娘は踊っていた。

じんわり涙が浮かんだ。

まだ予行なのに。

この半年で、娘がどれだけ頑張って来たのかが、この時、はっきりとした形で分かって、私は心底嬉しかった。

涙がこぼれないように上を向いたら、他のお母さん達も帽子の下で、目がうるうるしていた。

まだ予行なのに。


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この感動の涙には後日談がある。

台風で順延に次ぐ順延となった運動会本番。

まず、日程変更したにも関わらず当日は雨で、小学校のグラウンド開催の予定は体育館に変更された。体育館では広さが足りず、予定していた児童席が無くなり、児童は保護者席に同席することになった。

日程の変更について行けず主人は仕事で欠席、私は運動会のサポート係(音楽担当)で、午前中は体育館のステージ端の席にいることになっていた。

初めての運動会で、娘は席もなく、保護者不在という事態になった。

慌てた私は4日前に転倒して肋骨骨折していた自分の母を緊急招集したが、年に数回しか会わない祖母に、娘は喜びつつもびっくりしていた。

そして、娘が開会式で立派に列の先頭を努め、退場した時、問題が発生した。保護者席にいるはずの祖母が席を外してしまったのである。


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狭い体育館には、児童の親、祖父母や兄弟までたくさんの人がひしめいていて、人を探すのは難しい。

知らない場所で祖母を見失った娘は、母の私を探した。そして、退場門からは遠いステージのはじっこに座っている私を見つけた(ようだった)。

ステージの端にいた私の横に、先生と娘が来るまで、私は娘が体育館で迷子になっているとは知らず、せっせとテープの片づけをしていた。

先生から「保護者席にどなたかいらっしゃいませんか?」と声をかけられて初めて気が付き、席の辺りには誰もいないことを確認した私が「すみません。今、不在のようで…」と言いかけると、娘は「ほらね」という顔をして抱きついてきて、我が物顔で隣席の園長先生の椅子に座った。

こんなに色々アクシデントが重なって、いつもよりたくさんの不安を感じたはずの娘が全く泣かずに私を探し出し、一人で歩いて私のいる所へ来た。

その成長に驚いて、運動会の内容とは全く関係無く、涙が出そうになった。

娘の特性を知らない人から見たら、当たり前のことなのかもしれないけれど、繋いだ手を離したら100メートルくらいは余裕で走って行ってしまった小さな頃の娘からは、全く想像できない成長だった。

娘が産まれてからずっと、娘の成長に助けられて、今日まで続いてきたんだなと思った。

ライター:乃明


※ この記事は2024年03月10日に再公開された記事です。

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