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公開 2020年01月07日  

別れた夫を息子になんて説明しよう…迷った後悔に寄り添う笑顔<第三回投稿コンテスト NO.36>

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ある日、別れた夫のお母さんから電話があり…。涙するあおいさんを救ってくれたのは息子の存在でした。



「ママ!笑って!ねえ、にこにこして!」

私が笑うと、倍返しだ!と言わんばかりに、最近4歳になったばかりの息子はよく笑ってくれます。

突然ですが、うちの息子・・・"彼"はよく笑う子なんです。

彼が笑ってくれるなら、AKB48のフライングゲットを「キンタロー。」ばりに踊ることもあれば、怪獣になってヒーローである彼にやっつけられます。

ママは155cmで力も無いけれど、10畳の小さなリビングで肩車をしたり、時にはお馬さんにも変身します。

小学生になれば、キャッチボールでもなんでも、全力でやってやろうと言う気持ちです。

日々、全力で笑わせにかかっています。

君が笑ってくれるのならば。


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そんなこんなで、すったもんだがありまして。

彼が物心つく前に、私と彼のお父さんとは離婚をしました。

いつも笑顔の彼は"お父さん"の顔も覚えていないですし、触れ合った記憶も無いんです。

だからこそ、お父さんの役目も果たせないかなぁ・・・と、私は女優で「一人二役」だといつも思っています。(女優?)

「大変そう」なんて言われるけれど、彼がいればもどうにでもなっちゃうものでして。

22歳の時、彼がお腹にいるらしいと分かってから、毎日飲んでいたお酒はごぼう茶に変わっちゃいましたし。

気づいたらお気に入りのワンピースが、マタニティウェアになっていて。

カツカツ音が鳴るようなヒールは、歩きやすいペタンコのスニーカーになっていて。

当時好きだったサマンサタバサのバッグは、大容量のマザーズバッグになってたりなんかして。



けれども全然、嫌じゃなかった。

ママも彼にも色んな事があったけれど、きっとどこよりも笑いが多くて、毎日小さいリビングには笑いが溢れておりまして。

そんなリビングで、息子が3歳半の頃に突然、朝にトーストと目玉焼きを食べながらこう言って来たんです。

「ねえ、ママー。僕のお父さんは?お名前はなんて言うの?」

・・・

おお・・・ついにこの時が来てしまったのか。

「すみません、ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?」とか、3歳児に前振りなんて無いもんな。

今まで「そう聞かれたらこう言おう!」とか、「素敵な言葉で安心させよう!」とか、それとなく頭の中でシュミレーションをしていたのに、どうやらベストな言葉が出てこない。

それで、うーーーん・・・と考えていると、言葉よりも先に涙が出てきてしまったんですよね。


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あたし、女優失格だなと思いました。(女優とは)

自分で思っているよりも、どうやら随分とママは弱かったようです。

私はなんて、豆腐みたいなメンタルなんだと。笑

そうやってモゴモゴしていると、彼が私の顔を触って来ました。

「ママ!悲しい?怖い・・?にこにこして!ほら、にこにこー!」

と言って、私のほっぺをむぎゅう〜っとつねって来ました。

いいかい、口角を上げたまえ!と言わんばかりに。

「痛い、痛い・・」

そう言いながら変な顔になっていたらしく、息子はケラケラと笑ってくれました。

「ママ、にこにこしてね」

と言うと、まだ小さい手で私の頭をなでなでしてくれました。

それを見た私は、もう物事が分かっている息子にこう言ったんです。

「よし!お父さんに会えるかどうか聞いてみるね!」

そう言うと、「えぇ!?会いたい・・・!」と、目をまん丸にして、今まで見たことのない照れ臭そうな笑顔を見せてくれました。



私にとっては他人に戻れても、息子にとっては家族です。

それから、「よかったら近いうちに会いませんか?新幹線のチケットを取ろうと思うので、2人でそちらに行きます。」

その一言を"彼のお父さん"にドキドキしながら、どう送ろうかしばらく悩んでしまいました。

そう、悩む必要なんて無いのに、まごまごしてしまったんです。

新幹線のチケットが安い日を確認しながらも、やっぱりまだLINEは送れずにいました。

そうモヤモヤしている中、ある日私は美容室で髪を綺麗にしてもらう事に。

普段しないようなクルンクルンの髪にセットしてもらって、いい匂いのトリートメントでツヤッツヤで・・・もう、ふわっふわに浮ついています。

フットワークが軽くなっちゃって、「よし、今日は息子にデパ地下でケーキでも買っちゃおうかな!」なんて思っていると、突然一通の電話が鳴りました。



「結婚させてください」と挨拶で会ったっきり、4年ぶりに聞く"彼(息子)のおばあちゃん"であり、"元旦那さんのお母さん"の声でした。

晴天の霹靂ってやつでしょうか。

「はい、はい」って聞いているんだけれども、電話の内容が頭に入って来ません。

私は耳栓をしているのか?と言う感じで。

ただ、新幹線のチケットを取っても。

悩んで悩んで・・・LINEを送っても。

「もう、二度と会えない」

と言うことだけは理解しました。

毎月送っていた"彼のにこにこ笑顔の写真"に、「ありがとう」も「大きくなったね」も、どうやらこの先、ずっとずっとLINEに既読のマークもつかないらしい。


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うそだ・・・彼になんて言おう。

「遠いお空の国へ行っちゃったのよ」なんていう、ファンタジーな言葉をチョイスすればいいのだろうか。

大人になったら、説明すればいいのだろうか。

そして、彼の"会いたい人"に会う機会を、私が一通のLINEを躊躇したせいで失ってしまった。

「彼が会いたがっています」と、まだ27歳の彼のお父さんに伝えたかった。

そう考えていると、人目もはばからず歩きながら泣いていました。

ママはやっぱり、絹ごし豆腐ばりのメンタルらしいです。

その日、幼稚園にお迎えに行くのも、「顔を見たら泣いてしまいそう」と言う私を心配して、家族が代わりにお迎えに行ってくれました。



「ママ!髪の毛可愛い!」

美容室帰りの私を見て、彼はイケメンなセリフと共に、キラッキラの笑顔で玄関で出迎えてくれました。

いつもの、にこにこ笑顔です。

「あのね、お父さんだけど・・・今はちょっと会えないんだって」

そう言うと、「ふーん、そっか。じゃあ、ママと二人で新幹線でお出かけする」と言ってくれました。

やっぱりやっぱり、君の笑顔でママは泣いてしまいました。

豆腐みたいでごめんね。

すると、いつものように「ママ!どうしたの?ほら、にこにこでしょ?」と顔をつねって来ます。

ほら、いいかね、口角を上げたまえ!と。

満面の笑みでつねってくれます。


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そして、それ以来、彼は一度も「お父さんは?」と聞いて来ません。

「お父さんの事を聞くと、ママの笑顔が見れない。泣かせてしまう」と思っているのか、一切聞いて来なくなりました。

でも、大きくなったら、ちゃんと伝えようと思います。

それと、「会いたい人がいたら、今すぐにでも会いに行くんだ!GOだ!好きな女子ができたら好きって言うんだ!細かい事はどうでもいいから!絶対に後悔するなよ!」

と、修造カレンダーに出てくるような、熱血お父さんみたいなセリフを、思春期くらいになったら言おうと思います。

そして、"お父さんの事"を話すと、「あなたの笑顔が消えちゃうかもしれない」けれど、その時はまたママが笑わせにかかろうと思います。

これからも、全力で笑わせようと思います。

君が笑ってくれるのならば。

(ライター:あおい)


※ この記事は2024年04月10日に再公開された記事です。

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