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『心臓が右側にあるね』たった一言で「心臓疾患児の母」がはじまった

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医師の宣言で突如はじまった"心臓疾患児の母"。
5人目の家族である次女ちゃんの病気が、妊娠中に判明したときのお話。
妊娠~出産までをつづった4部作連載。

はじまりは、妊娠22週目の検診だった


3人目の子を妊娠中だった、39歳の真夏。

「一緒にお腹の赤ちゃん観に行こうよ。」

夏休みで暇を持てあます当時8歳の長男と、6歳の長女を出産予定だった市民病院の妊婦健診に連れて行くことにした。

「赤ちゃん、かわいいよねぇ~。」

うかれる長女。

「ぜっったい男の子がいい!」

謎の無茶ぶりをする長男。


そろそろ性別のわかりそうな赤ちゃんを見せてやりたかったのが、一転。

エコー画面に見入っていた市民病院の若手産科医にして、ちょっとヒゲクマ系のT先生が重々しく告げる。

「…お母さん、多分なんですが、心臓に異常があります。」

突然決まった大学病院への転院。


え、嘘。


の次に出てきた感情は鳥肌が立つような不安と恐怖。

(ちょっと何言ってんのかわかんない。クマ。)

脳内サンド富澤の突っ込みをかろうじて飲み込んだ。

近いしここがいいんですと懇願するも「NICUがない当院ではこの子のお産は無理です、大丈夫、僕がちゃんと紹介状を書きますから!」

クマ先生に紹介状と漠然とした不安とを持たされ送り出されてはじまった、心臓疾患児を育てる、サバイバル妊婦生活。

胎児は、女の子だった。


突撃!隣の大学病院!…の待ち時間の長さ


とにかく早く診てもらえるようにと、市民病院のT先生が予約をねじ込んでくださった8月末日。

胎児と今後の事の成り行きを想像しては、ため息をつきまくる母、わたし。

普段は呑気者の夫も、1人で病院に行かせるのはいかがなものかと、有給を取って同行することになった。

「2人で楽しいところに行くんでしょう~。」

何故かあらぬ疑いをかけてくる長女を、幼稚園の預かり保育に放り込む。


クマ系のT医師、渾身の紹介状を携えて、初めて足を踏み入れた医科大学附属病院。

緊張気味だった私たち夫婦は、まずその広大さと豪奢さに圧倒された。

初めて目にした呼び出し用のベルがにゅっと出てくるハイテク受付機で受付を済ませ、周辺をぐるりと眺めては驚き続ける。

「広いねぇ…おっ!なんかあそこにピアノが!」
「みんな病気なんかなぁ、人が多すぎる…」
「ドトールコーヒーすら豪華…」

などと自分も今日は患者なのに、立場を忘れて完全に病院お上りさん。

2週間ほど前に

「お子さんが心臓病です、さあ大学病院へ。」

と言われてかの地にはせ参じたものの

「今から貴方には火星に行ってもらいます!さあロケットに乗って!」

くらい現実味が無かった。


今思えば私の脳がこの現状を理解すること自体を拒否していたのかもしれない。

夫はなんと

「心臓の手術しますってなったら、なんぼかかんのかなぁ~三億円とか?」

という親のエゴ丸出しの金勘定をしていたそうだ。

のちに聞いた話だが、夫は当時

(手術に三億とか言われたら、もうわが子の為に横領か窃盗に手を染めるしかないやろうか…)

と犯罪者になる想像をする程度には、思い詰めていたらしい。


とにかく落ち着かないので、血液検査と尿検査を早々に済ませ…たいが、遅々として進まない。

流石は地域あらゆる難解症例の集う大病院。

検査と諸手続きを済ませ、やっとの思いで産科外来にたどり着くまでに2時間近くを要したのだった。

頑健が取り柄のはずなのに、ハイリスク妊婦に


やっとたどり着いた診察室前『ここでお待ちください』と言われて待つことまた数時間。


…長い。


指定された診察室には「ハイリスク妊婦」と銘打った掲示がされていて、ハイ私がハイリスク妊婦ですか、そうですかという神妙な気持ちになる。

いよいよ渡される評決を前に、母である私はこんなにすこぶる元気なのに。

お腹にいる次女ちゃんは今、もしかしたら苦しいのかもしれないと思うと、いたたまれない気持ちにもなった。

そんな中でも、真剣な顔で携帯の妖怪ウォッチぷにぷにに興じる夫、何だお前は。

傍らの妻がこんなに思い詰めているというのに、いっそお前もひとまとめにして消してやろうか。


そして、やっと鳴った呼び出しベルに促され、入室した診察室。

大学病院と言えども、小さく仕切ってある白っぽい内装の小部屋に、エコーとベッドがあるのはいずこも同じ産婦人科。

しかし、おっ、その部屋の隅に立つ若者はもしや医学生さんでは?

こんにちは、私がハイリスク妊婦です。

「はい、市民病院から紹介で来たきなこさんやね?赤ちゃんの心臓に異常が見つかったんやったね、びっくりしたでしょう?ほなちょっと見ていこうか」

そう言って、診察室右奥のパソコンの前に座っておられた胎児エコー専門医のK先生がイスをくるりと反転させた。

しかし私たち夫婦をいたわってくださるそのご尊顔が

「すっちーや…(※心の声)」

当方大阪在住。

吉本新喜劇を観ながらお昼を食べる民なので、役者にして座長の『すっちー』にそっくりで一気に肩の力が抜けた。

あとは全面降伏。

すべて一切お任せしますで、妊婦はへそ天状態。

医学生殿と担当ナースに見守られつつ、明かりを落とした暗い診察室で、エコーの画面に映されるわが子の姿を凝視した。

すっちー先生は、さすがの専門医らしく、エコーの機材を巧みに操る。

腹部にぺたりと付けたプローブで胎児内部の心臓の見える位置をうまく探って…

…いると、私のみぞおちを押しすぎです先生痛いです。と思ったがとても言えなかった。

「…このな、心臓の…うん」
「…あ~血管、まだ見えへんのかな」
「内臓は…錯位してないっぽい」
「あ~…あと、この子寝てるわ」

この大層な状況で寝てんのかーいと自分の腹の子に突っ込みを入れそうになったが、それ以外の事は専門用語が多すぎてよくわからない。

神様、うちの子は一体、どうなるんですか。

さすがの呑気者の夫も、素人にはよく分からないエコー画面を険しい顔で凝視していた。


この記事を書いた人
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きなこ

11歳ADHD・DCD男児、9歳ハイパーマイペース女児と
心臓疾患の2歳児の母をあまりがんばらないでやってます。

Twitter:日々の事と大体こどもの...

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