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公開 2019年08月07日  

「ワイルドよりチャイルドが大事!」家庭を優先するなら、覚悟が必要。

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家族と過ごす時間が一番幸せだと語るスギちゃんのインタビュー後編。もうすぐ2歳になる息子さんとの日々や、子どもが生まれてから変わったという仕事観・人生観についても聞いてみました。


俺のSNSは嫁の育児日記


── TwitterやInstagramでは息子さんの様子も頻繁に投稿していらっしゃいますね。

嫁も楽しみにしているみたいで、更新が滞ると「何か上げないの?」と催促してきます。

俺としては、かわいいシーンが撮れたときにだけ上げたいんです。
まだ上げるレベルに達していないと思うものを仕方なく上げても、あまり反応が良くないし……(笑)。

でも嫁は、息子を見て皆さんが反応してくれるのがうれしいみたいです。
育児日記みたいな意味合いもあるようです。


── 男の子の子育ては楽しいですか?

楽しいですね。

一姫二太郎という言葉もあるくらいですから、最初は「女の子がいいかな」なんて思いましたけど、男の子もいいものですね。

男の子のほうが少し幼くて甘えん坊だと聞くので、長くべったりと甘えてくれそうだなという期待もあります。

オムツを替えるのも、俺と造りが一緒ですから、ササッとできていいですね。女の子だったら、どうしたらいいか分からなかったかもしれない。


── 育児の得意分野はありますか?

俺は“子どもと遊ぶ担当”です。少しでも嫁さんが楽になればと思って、頑張って遊んでるんですが、“生活・しつけ担当”を受け持つ嫁からは「ズルい」と言われることも多いです。

でも真剣に遊んでいるからこそ乗り越えられる壁もあります。

最近、嫁が息子の歯磨きをしようとしても嫌がる日が続いていたんです。

さじを投げた嫁に「たまにはやってよ」と言われたので、息子に歯ブラシを持たせたまま、俺の歯磨きをずーっと辛抱強く見せてみました。

最初は全然やらなかったけど、俺が楽しそうにブラッシングしていたら、そのうち息子も歯ブラシを口に入れ始めました。


── 子どもにとっては遊び感覚は大事ですよね。

1歳半健診で虫歯が2本見つかってしまったので、こっちも真剣です。

ブラッシングをしっかりしてからフッ素を塗るのが理想ですが、とにかく「フッ素が口に入りさえすればいい」と目標設定を低くして、遊びながらやったら向こうも乗ってきました。

自分の歯にもフッ素を塗ってみたり、変顔してみたり、楽しそうにやるのがコツです。

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そうして歯は磨けてないけど口にフッ素を入れさせることには成功し、最低限の虫歯対策はできたということに。

これも俺の前に立ちはだかっていた「子育ての壁」を乗り越えた瞬間の一つでした。
こうやって一つひとつ、根気強く壁を崩していくしかないなと思います。

忘れかけていた感覚を思い出した


── 子育てをしていて、うれしいと思うのはどんなときですか?

たとえば何か食べさせようとしてもイヤイヤするとき、ありますよね。
でも「イヤ」って言って、そっぽを向いた次の瞬間、口の端についたご飯をペロッとなめて「あ、おいしい」という顔をしたりする。

そういう瞬間って、本当におもしろいし、かわいい。

大泣きしてても急にケラケラ笑い出すこともあるし。

ウケるポイントが全然分からないんだけど、それを見つけたときってすごくうれしいし、楽しい。

相手が喜ぶのがうれしいという感覚。
嫁と付き合い始めた頃もそう思っていたのですが、忘れかけていた感覚を思い出しましたね。

子どもや嫁の喜ぶことをしたい、笑った顔が見たいという思いが日々強くなってます。


── 逆に育児でイライラすることはないですか?

うーん、あまりないですね。

ただ最近、息子がSuicaで自販機の飲み物が買えることに気づいたみたいで、「Suicaを持たせろ」って言うんですよ。ピッっていうのがやりたいようで、自販機の前から全然離れない。

飽きるまで付き合わないといけないのか……と思って最初はイライラしてたんですけど、子どもの目先を変えればいいだけだと気づいて。
たとえば力づくで抱っこして全力で走るとか。

別の楽しみを与えると、子どもはすぐに忘れて新しいことに夢中になるんですね。
それを理解してからは楽になりました。

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嫁に聞くと、買い物に行って駄々をこねられたり、わがままを言われるとイライラすることがあるみたいです。
それは「買い物」という目標を達成できないからなのでしょうね。

俺の場合は根がいい加減なので、達成できなくていいじゃんと思っちゃう。
「買い物できなかったとしても別にいいじゃん」と。
だからイライラしないのかも。

楽しいほうを優先するという意味では、俺は子どもと目線が一緒なのかもしれませんね。


── 奥さんにとっては息子が2人みたいな感覚かも……?

子どもが俺にボールを投げてきたり、叩いてきたりしても、俺があまり怒らないので、それは嫁から注意されました。
息子が「やってはいけないこと」だとわからず、他の子にもやわらかいボールを投げてしまったことがあったみたいで。

それ以降は人が嫌がることを息子がしてきたら、泣くフリをしたり、無表情になるなど、これまでと違う対応をするようにしています。

嫁が「お父さんが泣いてるから、謝っておいで」と促して、俺の頭をナデナデするというシナリオです。
息子も「何かこれまでとは違う」と感じ取ってはいるようです。

俺のネタは子どもにはまだ早い


── 保育園に入れるご予定はありますか?

嫁は時々「入れてもいいかな」と言うんですけど、一緒にいられる時間が減っちゃう気がして、決心がつかないようです。

揺れ動いているんですね。
やはり絶えず子どもと一緒にいるのは大変なのでしょうね。

子どもの理想的な環境についても夫婦でよく話します。
途中で転園することがないように、幼稚園入園前に引っ越したほうがいいのか、とかね。

小学校もアメリカンスクールのほうがいいのだろうかという話もしています。
いろいろな環境の子が集まっていて社会性が身につきそうだし、英語も自然に学べますしね。

俺がこういう仕事をしているので、子どもや嫁が肩身の狭い思いをしないような環境にしたいとは考えています。


── お父さんがテレビにも出ている人、というのもレアな環境ですよね。

息子にはその感覚はまだないみたいですね。

YouTubeでネタをしているところは見せているんですけど、ちょっと目を話すと勝手にスクロールして“ひょっこりはん”を見てる(笑)。

俺のネタに戻しても、少し経って見ると“ひょっこりはん”になってる。
柱から顔を出して、ひょっこりはんの真似すらしている。

悔しかった……。

俺の「ワイルドだろぉ?」ではクスリともしないのに……。

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まぁ俺のネタは子どもにはまだ早いのでしょう。
逆に理解されても困りますよ。
それだけしっかりしたネタだということです。

子どもと遊ぶときに明日のことは考えない


── スギちゃんのように子育てを楽しむには、どうしたらいいのでしょうか? コツがあれば教えてください。

「無理すること」ですかね(笑)。

俺だって一度仕事のほうに気持ちが向くと、子どもと遊ぶのが面倒くさいなと思っちゃうことがあります。

「明日早いからもう寝たいな……」と思うこともあります。
でも、明日のことを考えたら、子どもとなんか遊べませんよね。

つい先日も嫁に指摘されました。
「帰ってきて全然遊ばないのはダメだよ」と。

その通りだなと思って。
「よし、俺は変わろう」と決心しました。
「子どもと遊んで死ぬなら本望だ!」というくらい極端に気持ちを振りました。

翌朝は6時起きでしたけど「今日は夜中3時まで遊ぶつもりでいくぜぇ」と決めて、一緒にお風呂に入ったり、ボール遊びしたり。

結局、朝寝坊しましたけどね(笑)。

まぁ仕事で外に出れば、仮眠を取るくらいの時間はありますから。
嫁のほうが大変です。

外で働く俺のほうが自由があると思うと、「寝不足は仕事に響く」なんて言ってられません。
自分に甘えを持っていかないよう、子どもや嫁を主体に考えるようにしています。


── 子どもを通して学んだこともありますか?

子どもって、強い意志を持って全身で自分のやりたいことを訴えてくるでしょ。最初はそれに驚きました。

子どもを持つ前は、もっと親が主体で動けるものだと思ってたんです。

でも全然違った。
子どもは全身全霊で、嫌なことは嫌だとアピールしてくる。
自己主張が強くて、やりたいことがはっきりしてて、こんなにおもしろい生き物だったんだなと思いました。
見ていて飽きないですよね。

それに対してイライラする人もいるのもしれないけど、子どもは親の所有物ではないのだから、仕方がないですよ。

今はワイルドよりチャイルド


── お子さんが生まれて、仕事のやり方や付き合いも変化しましたか?

仕事に対する意識は大きく変わりましたね。

生まれる前がめちゃくちゃだったこともありますが。
以前はメディアの取材でも、記者さんへのサービス精神から、思ってもいないことまでしゃべっていた。

でも記事はずっと残りますからね。
子どもがそれで何か言われたら……と思うと、フィルターがかかりますよね。

営業の現場でも、以前は裸足になることもあったけど、嫁に「雑菌が家に持ち込まれるからやめて」と言われて靴を履くように。

ワイルドじゃねーじゃん!と思われるかもしれませんけど、今はチャイルド優先です(笑)。

それで仕事が減ってしまっても仕方がないかなと。

もちろんお笑いの仕事は大好きですが、仕事がなくなったら、田舎に引っ越して畑を耕す暮らしもいいかなと思ったりします。
自分の人生に何が一番大事なのか、はっきりした感じです。

自分を消しているつもりはないんです。
ただ、子どもや嫁の楽しめるほうにしか行きたくないと思っているだけで。

あれ、俺ってもしかして、100点満点の旦那じゃないですか……?

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── なかなかできないことだなと思います(笑)。

もともと自分というものが、そんなにないんですよね。

子どもの頃、親にどこかに連れてってと頼んだこともないし、誰かに何かをしてもらおうと思ったことがあまりなかった。
自分でやればいいと思っていたから。

食卓で「醤油取って」と言うことにすら抵抗がありました(笑)。

無駄を削ったらスッキリした


── 子育てと仕事の両立に悩むパパにはどんな声をかけたいですか?

ちょっと引いて自分のことを見てみるといいかもしれません。

たとえば同僚と飲みに行って愚痴を言い合ったり、キャバクラに行ったりするのは、家族との時間を削ってまでやりたいことなのか。本当にそれで心が満たされるのか。

俺だって人のことは言えません。
以前は俺もそうでしたから。

先輩と飲みに行って、別に悩みなんてないのに、無理やり悩んでいるフリをして場を盛り上げたりしていました。

あるとき、室井滋さんと飲んでいたときに言われました。
「何悩んでんの? 悩んだって意味ないじゃん」と。

無駄なことをしていたなと気づきました。

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それに、女の子とカラオケに行ってキャーキャー言われるより、子どもと遊んでケラケラ笑ってもらえるほうが何倍も楽しいことにも気づきました。

無駄を一つひとつ削ぎ落としていったらスッキリするんじゃないでしょうかね。


── 子育て中のママやパパたちにメッセージをお願いします。

パパたちサイドの意見しかわからないですけど……今は少し仕事を犠牲にしてでも、子育てを楽しんでもいいのかもしれないですね。

仕事を大切にしても、仕事はそれに応えてくれてないこともありますよね。
思うような評価が得られなかったり、結局は自分がいなくても会社は回るという事実だったり。

以前テレビで、子どもを田舎の環境で育てたいといって新幹線通勤をしているお父さんが紹介されていました。
遠距離通勤を認めてくれない会社を辞めて、転職までしたということです。

それくらい家族第一でもいいんじゃないでしょうか。
今しかないできない子育てに主軸を置いて楽しんでもいいんじゃないかなと。

ホームパーティを開いたりするアメリカンなお父さん。
ワイルドでいいと思いますよ。


プロフィール
スギちゃん
1973年生まれ、愛知県尾西市(現一宮市)出身。サンミュージックプロダクション所属。高校を卒業しお笑いコンビとして活動、その後ピン芸人へ。小型2級船舶、キャンプインストラクター、温泉ソムリエなどの資格を持つ。持ちネタの『ワイルドだろぉ?』は2012年の「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれている。

※ この記事は2024年03月31日に再公開された記事です。

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