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公開 2019年07月20日  

僕はアホなことして嫁を楽しませる。だって「嫁の状態=家族の雰囲気」だから。

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双子の育児というハードな経験によって、子育てスキルがぐんぐん伸びたというNON STYLEの石田さん。夫婦の子育てスキル格差から起こる対立問題については、石田さんならではのユニークな視点も。インタビュー後編をお届けします。


相方へのディスり方もまろやかに


── お子さんが生まれてから、仕事への取り組み方なども変わりましたか?

変わりましたね。
言葉がまろやかになったと思います。
井上を悪く言うのも「どうやって丸く悪く言うか」と考えるようになりました(笑)。

それに子どもって信じられへん動きとかすることがあるでしょ?
「え?このタイミングで、その動き?」みたいな。
そういうのがネタのヒントになったりすることもあります。


―仕事の量もセーブされているんでしょうか。

昔は「チャンスがあればなんでもやる!」というスタンスでしたが、今は「自分のなかに異物感が残るくらいなら家で家族と過ごしたほうがいいんじゃないか?」「こんな出方をしてまでテレビに出たいのか?」と考えるようになりました。
会社もマネージャーも理解してくれて助かってます。


── ネタを考えるときなど、家で仕事をされることはありますか?

家ではやりません。
家で僕が仕事してたら、嫁さんだって「手伝ってほしい」と思うでしょうし、僕も泣き声がしたり呼ばれたりしたら、気になってそっちに行きたくなりますから。
効率も悪いし、双方が集中力を削がれてしまうと思うんです。
だったら帰宅前に喫茶店で30分くらいやって、終わらせてから帰るほうがいいです。
よっぽど時間がないときに、みんなが寝静まってから少しやるくらいですね。

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── 定期的に奥様がメンテナンスする日を設けているとか。

最初はメンテナンスが必要なことすらわからなかったんです。嫁さんも僕が仕事で忙しいのをわかっていて、遠慮して言えなかったみたいで。

ある日「美容院に行きたいんだけど……」と言われて気づきました。
男って気づいてないだけのことも多いから、「自分の時間がない!」という奥さんは、旦那さんに率直に伝えてみるといいと思います。

それ以降は、嫁さんから言われる前に「行っておいでよ」と声をかけるようにしたり、「ついでにマツエクもやってきたら?」と提案したり、なるべく行きやすい雰囲気を作るようにしています。

最初は嫁さんも、出かけている間にこちらの様子をLINEでうかがってきたり、気になっていたみたいですが、今はそんなこともなくリラックスできているみたいです。
友達にも会いたいだろうから、前もって僕が休みをもらうこともあります。

ママの気分が家族の雰囲気をつくる


── メンテナンスはママたちには必要な時間ですよね。

ちょっとしたことで気分って上がるじゃないですか。

嫁さんが家に帰ってきたときに、優しい笑顔で子どもの相手しているのを見ると、どんなに子どもが好きでも、子どもと離れる時間は必要なんだなぁと思いますね。

子どもの調子が悪い日が続いたりして嫁さんが寝られていないときは、別の部屋で1人で寝てもらったりすることもあります。

やっぱりママの気分は家族全体の空気にダイレクトに伝染しますからね。
ママがピリピリすると、家全体の雰囲気がピリピリしてしまいます。

僕がアホなことするのも、子どもを笑わせるというより、嫁さんに楽しんでもらいたいからなんです。
ママが笑っていれば、子どもたちも楽しそうですから。

だから僕たちパパができるのは子どものケアというよりも、ママの気持ちのケアかもしれないですよね。

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── 奥さまとの日頃のコミュニケーションのコツは?

夜はどうしても遅くなることも多いので、結婚した当初から朝ごはんは必ず一緒に食べるようにしてきました。
子どもが生まれる前は、そこでゆっくり話ができましたし、今は家族4人で賑やかな朝食タイムになっています。

あと僕と嫁さんの両親も含めた6人のLINEグループがあって、そこにいつも子どもたちの動画や写真を送るようにしてます。

主に嫁さんが投稿するんですけど、うちの両親は大阪にいるのでそれを見て反応してきたり。
逆に大阪に行ったときは、うちのオカンが写真をいっぱい撮って送り、奥さんの両親がうらやましがったり。


── 奥さまとケンカをすることはないですか?

子どもができて以降、夫婦ゲンカはしてないです。
子どもができてからのほうが共通の話題が増えて、友達っぽくなったと思います。
問題ごとも楽しいことも、全て共有しています。

毎晩、子どもたちが寝た後に、2人で晩酌しながら子どもたちの写真や動画を見て、「お姉ちゃんはこんな癖あるよね」「そうなん?」「そうそう!」とか言って盛り上がっています。

見ているうちに起こしたくなっちゃうんですよね(笑)。

メモをとるだけで解決できることもある


── 普段、奥さまとのやりとりで気をつけていらっしゃることなどはありますか?

どうしても一つのことに集中すると、それ以外のことが目に入らなくなることがあります。
脳みそのせいやから仕方ないやんと思ってしまうけど、嫁さんからしたら関係ないですからね。

だから頼まれたことは、絶対に忘れないようにメモに書き留めるようにしています。
たとえば「お風呂を洗う」とか、「明日の朝、◯◯をやる」とか。

メモをするようになってから、うっかり忘れることはなくなりました。
頼まれごとをきっちりクリアできるようになり、僕も嫁さんもストレスが減ったように思います。

あとは嫁さんと子どもの写真をなるべく撮ること。
僕と双子の写真は嫁さんがよく撮ってくれるんですけど、よく考えたらいつも一緒にいる嫁さんと子どもの写真って意外と撮ってないんですよね。

それに気づいてからは、なるべく撮るようにしてます。


── 子育ての失敗談などはありますか?

失敗というか怖かった話なんですけど、生まれてすぐの頃、仕事をしてたら「抱っこ紐から子どもが落ちちゃったー!」と大パニックの嫁さんから電話がかかってきたことがあります。

今考えると、床に座って抱っこ紐に入れようとしたときに、ちょっとコロンと転がった程度のことだったんですけど。
子どもはびっくりして大泣きしてるから、嫁さんも焦ったみたいで。

僕も仕事先で電話を受けて「ええー!?」と驚いて。
電話だけでは状況もよくわからなかったし。

結局、その後の打ち合わせを全部キャンセルして、一緒に病院に駆け込みました。
子どもは元気そうでしたけど、頭を打ってたからどうなるかわかれへんし……生きた心地がしなくて、ホンマに怖かったです。

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不可能なことが多すぎてあきらめがついた


── 初めての出産・子育てが双子で大変なことが多いのでは?

双子だと、いい意味であきらめがつきましたね。
1人を抱っこしたら、もう1人はどうしても放っておかなきゃいけない。
外出先で1人泣きやませてベビーカーに戻したら、もう1人が泣き出すということも日常茶飯事ですから。

これが子ども1人だったら「何とかできるだろう」という周りの目もあるし、「何とかしなきゃ」と焦ってしまうと思います。

不可能なことが多すぎて神経質になれなかったのが結果としてよかったかもしれませんね。


── 保育園や幼稚園に入れる予定はありますか?

うちは幼稚園から行かせる予定です。

自宅によく人を呼んでパーティをしていますけど、子どもたちをたくさんの人に会わせたいからというのもあります。
保育園に行ってない分、他のパパ・ママや同じ歳頃の子たちとも交流した方がいいかなと思うし。

双子の会というのもあるんです。
ウチで集まることもあるんですけど、ベランダにプールを置いて遊ばせると双子がうじゃうじゃいて、誰がどれやねん状態。最高にかわいいです。


── 双子の親同士で共感し合えることも多いのでしょうね。

同じ苦労と同じ楽しみを分かち合える仲間ですからね。

この間、双子友達のママが生まれたての赤ちゃんを連れて遊びに来たんです。僕らも抱っこをさせてもらったんですが、新鮮でしたね。

たった2年前のことなのに「こんなに小さかったかな」とか「こんな感じだったなぁ」とか、いろいろ思い出しました。

その刺激もあってか、嫁さんが「3人目もいいな」と話してました。
双子の子育てで疲れてるんちゃうかなぁと思ってましたけど、「楽しみは家族が増えるごとに増える」って言うんですよ。
僕も子どもが大好きなので、ぼちぼち考えていきたいです。

ふてくされるのはダメ


── 子育てに苦労しているパパにアドバイスをするとしたら?

僕もそうですけど、ママとパパの子育てにおける技術や経験を比較したら、ママ10段・パパ9級くらいの差がある家庭も多いと思います。

最初は同じ10級から始まっても、一緒に過ごしてる時間に差がありすぎて、どんどん離されちゃう。

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するとママからしたら「なんでできないの?」「これなんでここに置くん?」ってなる。
おむつ替えても「また漏れてるやん?」とか。
仕方ないのかもしれないけど、これが男からするとつらい。グッサリ心に刺さります。

世の中のお父さんを見てても、それでふてくされている人がいるように思います。
でも、そこであきらめると、どんどん置いて行かれます。
差を縮めるなら早いほうがいい。
子育ては、やればやるほど経験値が上がりますから。


── 石田さんの経験値、かなり高そうですね。

僕がよかったのは、子どもが双子だから、スキルを磨くチャンスが回ってきやすかったこと。
最低1人は担当できますから。
やらなきゃ仕方ないという部分もありましたけど、できるようになったから、何とか子育てを楽しめてる。

おむつ替えも最初はコツがわからなくて。
嫁さんがやるときは子どもたちも静かにしてますけど、僕の場合、ちょっとでもドキマギするとその隙を突かれて、暴れられたり逃げられたり。
でも、やるしかなかったから。

やってないとバギーの畳み方さえわからないですよね。
できないことが多いと、子育てが面白くなくなっちゃう。

今では僕も、子どもがオーバーオールの下にタイツを履いていたりすると、「今日のおむつ替えはムズイぞ……」と脳内で手順のシミュレーションが始まるくらいにはなりました。

板前のように奥さんの技を「見て盗む」


── ママ側の優しい眼差しも大切ということですね。

ママも旦那さんに期待しすぎないほうがいいかもしれない。
そしてパパ自身も自分に期待しないほうがラクです。
失敗は恥ずかしいことじゃないから。やったうえで失敗したなら、しょうがない。

一番よくないのは、やらなくなること。
あきらめたらそこで、子どもとの関係も奥さんの信頼も、止まっちゃいますから。

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こんなこと言ってますけど、僕も嫁さんのスピードや技術には全然追いついていません。
ダメ出しされることもありますし、最後には「ママみたいにやるのは無理だよ」と言っちゃうこともあります。

おむつ替えする嫁さんを横目で見て、「はやっ!」とか言いながら、なんとかやっている感じ。
教えてもらうんじゃなく、嫁さんの技を見て盗んでいます。
板前出身なのでそういうのは得意(笑)。

パパたちはゲームを攻略していく感覚で、自分を盛り上げていくといいかもしれませんね。


── 最後に、同じ子育て中の方々にメッセージをいただけますか?

子育てに失敗はつきものですよね。
イラッとすることも多いと思いますが、角度のつけ方次第で笑いに変えられるんじゃないかと思います。

当事者になりすぎると、つい感情的になってしまいますが、少し俯瞰で見ると失敗は「面白い現象」だったりします。
ムキになりすぎないことが、子育てを楽しむコツなんじゃないでしょうか。


プロフィール
石田 明
1980年生まれ、大阪府大阪市出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2000年に高校の同級生・井上裕介とNON STYLEを結成、主にボケとネタ作り担当。爆笑オンエアバトル第9代目チャンピオン。2008年M-1グランプリ王者。近年はお笑い芸人としての活動のほか、舞台への出演や、脚本・演出も。

出演情報
●舞台
幼児・小学生・戦隊ファン向け夏休み企画『ももたろう』
日程:2019年7月22日(月)〜8月8日(木)
会場:ルミネtheよしもと
作・演出・主演 石田明
https://www.yoshimoto.co.jp/lumine/momotaro/

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●全国ツアー
NON STYLE LIVE 2019「Re:争論〜リソウロン」
日程:2019年7月21日(日)〜2019年10月1日(火)
http://nonstyle.yoshimoto.co.jp/

●DVD
『NON STYLE LIVE 〜38サンパチ〜』
2019年7月24日(水)発売

※ この記事は2024年02月01日に再公開された記事です。

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