「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。のタイトル画像
公開 2019年05月02日  

「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。

68,273 View

末っ子の楽しそうな笑顔に、心に一瞬浮かんできた「怖さ」。
その「怖さ」の正体に対して、長女が出してくれたヒントとは。


なにげない、1コマだった。


台所で洗い物をしていたら、ふとリビングにいる末っ子と目が合った。

お~いと手を振ると、末っ子もお~いと手をフリフリしてきた。

そこでちょっと楽しくなってきて手をブンブンと大きくふると、末っ子の顔がパアっと明るくなって、ニコニコで手を振りかえしてくる。

唇を突き出してひょっとこにして、ふざけてヨイヨイと踊ると、末っ子も「ひゃあ~!」って笑いながらお尻を振り出した。


「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像1


ふふふふふと笑いながら末っ子は踊った。

嬉しすぎて、末っ子の顔がピンク色になっている。

私もつられて、あはははと笑う。

リビングの中央で2人して手を取り合い、クルクル回すと末っ子がふわっと浮いた。

私たちはでたらめに踊り、むちゃくちゃな歌詞を作って歌った。

息が弾んで、末っ子と顔を見合わせた。

2人でまた笑った。



「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像2
「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像3

かわいい、かわいい!でも…?


ああ可愛い。

笑いながら、私はふと怖くなった。

何に?

自分の持っている力の大きさにだ。

こんな気まぐれな踊りで、子どもがこんなに楽しげに笑う。

そんな力があることに改めて気がついて、手を眺めた。

自分の気まぐれで、子どもは笑ったり悲しんだりする。

一日中一緒に遊んだり踊ったり本を読んだりしたら、子どもは幸せになれるだろうに・・・。

でも、私にはその余裕が無い。

保育園から帰ってきて6時半、そこからご飯を作って7時、食べさせて7時半、お風呂に入りなさいの押し問答で8時。

お風呂で子どもが「押した」だの「押してない」だのと喧嘩したりして8時半、そこからぐったりして気がついたら9時で、夫が「どうだった?」って言いながら帰ってきて・・・。

余裕が無い?
本当に?

本当はもっとできるのにやってないだけじゃないの・・・?

今だって、ほんの数分踊っただけじゃない。

でも、末っ子がこんなに幸せそうに笑って・・・



「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像4


その後、2階に上がって寝室でぼんやりしていると、長女がガバっと布団の上から抱きついてきた。

長女:どうしたの?疲れた?

私:う~ん、何だかちょっと怖くなっちゃって。

長女:何に?

私:さっき、お母さんがちょっと踊ったら、末っ子ちゃんがすごい楽しそうに踊ったでしょ?

長女:うんうん、見てた。

私:それが何だか怖くなったんだよね…

あんなに楽しくさせる事ができるのに、毎日そこまでできてないなあ・・・っていうね。

うんうんと私の話を聞きながら、長女は「なるほどねえ」とうなずいた。

長女:末っ子ちゃん、お母さんが楽しませたんじゃ無いと思うよ~?

私:というと?

長女:末っ子ちゃんが楽しそうに踊ったのは、お母さんの顔が楽しそうだったからだよ。

私:顔が?

長女:そうそう、お母さんが子どもを踊らせたというより、お母さんが楽しそうに踊ったから、末っ子ちゃんも一緒に踊ったんだよ。

「いつも子どもを楽しくさせているかな…」って悩むんじゃなくて、お母さんが「毎日を楽しく過ごそう!」って考えるだけでいいと思うんだよね。

お母さんが寝転んで漫画読んでて急に笑い出したりしてさ~。

それで、何々!?どこで笑ったの!?って漫画をみんなでのぞき込んで笑って、そんなんがいいんじゃないかな、楽しい家族って。

私:なるほど・・・「楽しくさせなきゃ」じゃなくてね。

長女:そうそう、「何か知らないけどお母さん楽しそう」ってのが、こっちも1番楽しいんだよね。

こっちはこっちで毎日を楽しんでるから。

そんな話を聞いてから、私は時間に余裕があったら趣味の絵を描くことにした。

子どもが漫画を読んでいる手を止めて、「何描いてるの~?」とのぞき込んで来る。

「あ!これ私の顔!?見て見て~!これ、私~!」と、次女が自分の似顔絵をクルクル回す。

子ども達が紙を取り出してきて、自分の似顔を描きだした。

みんな楽しそうだった。楽しいって、ちゃんと自然に沸いてくるんだ。


「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像5
「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像6

しんどくなってきた本の読み聞かせ


子どもが赤ちゃんの頃から、夜の寝かしつけに何冊も本を読み聞かせてきた。

末っ子は図鑑が好きだったので、布団の中で分厚い図鑑を顔の上に持ち上げて、何ページも「水の生き物」とか「昆虫の世界」とかを読んだ。

私も生き物が好きな方なのでそれなりに楽しんでいたけれど、末っ子のお気に入りの「巻き貝の仲間」あたりから辛くなってくる。

「オキナガエビスガイ・・・きれいなオレンジねえ・・・先がとんがってるね。ミミガイはすべすべしてるねえ・・・次は同じミミガイ科のイボアナゴだって・・・小さいイボイボがあってね・・・」

(長い・・・貝のページ・・・長い・・・30ページもあるやん・・・末っ子、全然寝てくれないし・・・夜はぼんやりして脳みそ休ませたい・・・そろそろ寝て・・・)

今までずっと「親子のコミュニケーションを」と思って頑張ってきたけれど、「今日はこれでいいかな・・・」と、スマホの「絵本の読み聞かせ動画」をポチっとした。

スマホから流れてくる物語を聞きながら、末っ子が「おむすびころりん、すっとんとんだって・・・」とクスクス笑う。

「何がそんなに面白いの」

「すっとんとんだって、すっとんとん・・・すっぽんぽんみたい・・・」

動画の歌に合わせて、末っ子が「おむすびころりん、すっぽんぽん♪」と歌う。

それを見て、長女と次女が「しょうもないなあ~」と笑う。

私も「しょうもないなあ~」ってつられて笑う。

「お母さんが側でダラダラしてクスクスしてのんびりしてたらね、こっちも力がだら~んと抜けてリラックスできるんよね。

それがお家にいる1番の意味じゃないかなって思うよ。」

そう言って、長女が寝転んで漫画を読み始めた。

昔、私が読んでいた漫画だ。

2人でこのシーンがどうのこうのと話をしていると、いつの間にか長女も寝てしまった。


「無理に楽しませようとしなくて大丈夫」長女が教えてくれたこと。の画像7


私が子どもの頃には、「今頑張れば将来楽になるのよ」とか、「昨日の自分より今日の自分の方が常に上でいなさい」とか、「努力は裏切らない、盗まれない」とか、そんな言葉で背中を押されながら生きてきた。

SNSの中には素敵な育児が満載で、リビングが整っていて、美味しそうなご飯が並ぶ。

「クッキーでも一緒に焼かないといけないんじゃないか」とか「子どもの将来に対してそろそろ準備しておかないといけないんじゃないか」とか心の隅っこから誰かが言ってくる。

力を抜いて子育てするのが、ずっと難しかった。

誰も見ていないのに、夜の読み聞かせをサボってはいけないような気がしていた。

子どもが「ママ、暇~」というと、何か一緒にしないといけないと思った。

姉妹喧嘩をしてどちらかが泣くと私が苦くなって、すぐに仲直りさせないと・・・と焦った。

毎日が楽しい事だけの家にしないといけないような気がしていた。

ダラダラしてクスクスしてのんびりね。

お母さん、ちょっと、これからやってみるね。


※ この記事は2024年02月09日に再公開された記事です。

Share!