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小さな命を守るNICU。300グラム以下の赤ちゃんも健やかに育つのはなぜ?

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高橋孝雄先生著作『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(マガジンハウス)より、選りすぐりのお話を3週連続でご紹介いたします。

出典:http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10154001733

体重300グラムで生まれた赤ちゃんも、遺伝子に守られ、力強く生き抜きます。


最近は医療現場を舞台にしたテレビドラマが人気のようですね。

ぼくもちょっと気になって見たことがあります。

あざやかな手さばきの手術シーンもあれば、出産にまつわる心理を丁寧にえがいた作品もありました。

そのせいかNICU(新生児集中治療室)のことも、「テレビで見たことがある」というひともいると思います。

ちいさく生まれた赤ちゃん、仮死状態で生まれた赤ちゃん、生まれつき重い心臓病がある赤ちゃんなどが、懸命に命をつないでいます。

心拍数や血圧、血液中の酸素量などを表示するモニターとアラームが鳴りやまない不夜城のようなNICU。

この部屋で起こる遺伝子の力と環境の恵みの物語は、どんなドラマよりも神秘的かもしれません。

赤ちゃんがおかあさんのおなかで過ごすのは、日周期をひと月と換算して10 か月前後。

最終月経から40週前後が平均的な予定日ですね。

しかし、なんらかの理由で予定よりもずっと早く生まれてくる赤ちゃんがいて、NICUに運び込まれてきます。

体重が1000グラム以下の〝超〞が付く低出生体重児も含まれます。

ちいさな、ちいさな、でも立派な〝ひと〞なのです。

この超低出生体重児、または超未熟児と呼ばれる〝人びと〞のお話をさせてください。




さて、ひとの脳にはしわがあることはご存じですね。

ひとが高い能力を手に入れるためには、しわの数とパターンが決められたとおりに作られることが必須です。

そして実際、脳のしわは遺伝子が決めたシナリオに沿って、精密に作られていくのです。

ひとつひとつのしわには名前がついており、それぞれの働きもわかっています。

顔の右側を動かす部分とか、見たものの動きを感じ取る部分とか、すべての脳機能は正確に〝しわの地図〞の上に配置されています。

妊娠期間が27週よりも短くなってくると、赤ちゃんは脳にしわがほとんどない状態で生まれてきます。

まだつるつるの脳を持った赤ちゃんは、NICUの保育器のなかで過ごすことになります。

酸素、人工呼吸器、特殊な栄養、抗生物質、血圧を上げる薬、ブドウ糖、カルシウム、必要なら手術も、ありとあらゆる物、事が赤ちゃんの命を守るために使われます。

ひと月、ふた月と、NICUで治療を受ける中で、ちいさな赤ちゃんの脳には、決められたとおりに正確にしわが刻まれていくのです。

片手で紙を丸めて握りつぶしたときに偶然できる不規則な〝しわしわ〞とはまったく異なる、まるで細かく、細かくおられた折り紙のように。それは遺伝子によってあらかじめ決められた順番であらわれてきます。

そして、赤ちゃんがご両親の待つお家に帰るころには、予定日どおりに生まれた赤ちゃんと同じ、つまりそれは、ぼくたちおとなと同じパターンのしわが脳の表面に刻まれているのです。


脳の形や機能を作り上げていく遺伝子の力はとても強く、安定しています。

だからこそ、本来であれば子宮の中で過ごしているはずの期間に、NICUのような人工的な環境で育ったとしても、大事な部分はしっかりと育まれていくのです。

それは、発展途上国に生まれ、十分な栄養も与えられずに育つ赤ちゃんでも同じこと。

遺伝子の力によって、守るべきものは厳重に守られることになります。

たとえ重い栄養失調に苦しんでいても、頭の大きさ、つまり脳の大きさが最後まで正常と変わらないことをご存じですか?

それは大事な脳は優先的に遺伝子によって守られているからなのです。

どんなに不利な環境であっても、遺伝子は変わらずに子どもたちを守ろうとします。


現在、生存できた赤ちゃんの出生体重世界最少の記録は、260グラムの女の子。

Mサイズのりんごが1玉250gなので、りんご1つを手のひらに乗せた重さをイメージしてみてください。

実は世界で2番目にちいさな赤ちゃんが生まれたのは、ぼくが働いている病院の産科でのこと。

2006年秋、25週目に265グラムの体重で生まれた女の子は、現在は健やかに育っています。

もうすぐ中学生になります。

おかあさんのおなかの中でゆったりとすごしているはずが、いきなり外に出され、点滴をつながれ、痛い処置に耐え、それでも遺伝子の強い支えを借りて、決められたとおりに着々と育ってゆく。

そんな奇跡のような物語をたびたび経験しました。

300グラムにも満たない赤ちゃんがNICUでの治療を終え、家庭に帰って、その後も順調に育っているという事実は、ぼくたち小児科医にとって心のよりどころになっています。

生まれてきたからには、すべての子どもたちに幸せな人生をプレゼントしたい。

子どもと人生を共に歩む家族みんなに幸せになってほしい。

小児科医にとって尊厳にもかかわると言えるそのような思いを忘れないためにも。



(編集:コノビー編集部 瀧波)

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