1. 総合トップ
  2. >
  3. 子育て
  4. >
  5. 「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。

「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。

「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。のタイトル画像

ガンで余命宣告を受けた35歳の父が、2歳の息子に伝えたい、大切なことを記した書籍『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)。写真家・幡野広志さんの尊いメッセージを、ご提供いただいたお写真(奥様撮影)とともに、2つの記事でご紹介いたします。

息子が教えてくれたこと

毎日掃除をしていると、息子が真似をして掃除をするようになった。

毎日写真を撮っていたら、息子が真似をして写真を撮るようになった。

もちろん何をやっても「すごいなあ」「上手だね」とほめるので、息子は喜んでやる。

「子は親の鏡」という言葉は本当だったのだ。


先日、バスに乗っていたら、降車のときに運転手さんにお礼を言うよう、子どもに促している母親がいた。

幼稚園にあがるかどうかくらいの小さい子だ。

「ほら!ありがとうは?」

まるで怒るような、少しきつい言い方だった。

「ありがとう」というのは優しい言葉のはずだが、マニュアルを厳しく教え込んでいるようで、違和感があった。

指示なんかしなくても、母親が毎日バスの運転手さんやコンビニの店員さんに対して「ありがとう」と笑顔で言っていたら、自然と子どもは真似をするのではないだろうか。

親は子どもにいろいろなことを教えようと意気込んでいるが、子どもはさりげなく、親にたくさんのことを教えてくれる。

「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。の画像1
photo:Yukari Hatano

息子は僕に、ずっとわからなかったことも教えてくれた。

それは「いい写真とはなんだろう」という、写真家である僕にとって大きな問いだ。

18歳でなんとなく写真を撮りはじめ、学校で学び、師匠に出会って、働きながら修業もした。

地味な仕事も、きつい仕事も、かなり気が進まない仕事もカメラを使ってしてきた。

お金にならないけれど心の底から撮りたい写真も、ずっと撮り続けてきた。

大きな賞をもらえた写真も撮ったし、恥ずかしくてもう見たくもない下手な写真も撮った。

それなのに「いい写真とはなんだろう」の答えは出てこなかった。

ガンとわかってからは、僕が死んで何年かたって息子が写真を見たとき、「お父さんは僕のことを愛していたんだな」と伝わることを願って撮影している。

今の僕の心境を息子に伝えたい。

そのために毎日、撮影している。

笑った顔がかわいい。

夢中で『きかんしゃトーマス』の絵本を見る横顔がかわいい。

初めて温泉に行って浴衣を着た姿がかわいい。

何をやっても、たまらなくかわいい。

「いい写真ってなんだろう」とずっと考えていたけど、息子が教えてくれた。

撮影者の伝えたい気持ちが正しく伝わる写真のことなんだと、ようやく気づいたのだ。

「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。の画像2
photo:Yukari Hatano

気づくのが遅いけど、まだシャッターが押せるので、間に合わなかったわけではないだろう。

34歳でガンになるのは、早すぎるのかもしれない。

それが僕の運命だったとしたら、写真家という人生もまた運命だったのかもしれない。

僕の気持ちを息子に伝える、そのために写真を撮る人生を選んだのかもしれない。

このときのために写真を学び続けていたのかもしれない。

今日も僕は写真を撮るし、息子はそれを真似しようと、笑顔でカメラに手を伸ばす。

カメラが息子のヨダレでベタベタになるのはちょっと困るので、近いうちに子ども用のカメラを、妻と3人で買いに行こうと思う。



当社は、この記事の情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。この記事の情報を用いて行うすべての行動やその他に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。また、表示価格は、時期やサイトによって異なる場合があります。商品詳細は必ずリンク先のサイトにてご確認ください。

この記事を書いた人
コノビーおすすめ書籍の画像
コノビーおすすめ書籍

コノビーで連載中のライターさんの書籍や、育児中のパパ・ママにおすすめの書籍を幅広くご紹介!
みなさまがお気に入りの一冊と出会えるきっかけになれますように。
...

  1. 総合トップ
  2. >
  3. 子育て
  4. >
  5. 「いい写真ってなんだろう。」答えは息子が教えてくれた。