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公開 2015年05月06日  

産婦人科医がデータで解説!妊娠と年齢の関係とは?

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近年不妊治療の技術も大幅に進化し、たとえ高齢でも無事に妊娠出産されている芸能人のニュース等も良く目にする様になりました。果たして本当に不妊治療の技術は年齢のリスクを乗り越える事ができるのでしょうか?今回は年齢に伴う、妊娠率・流産率・染色体異常発生率をデータで示します。


年齢と妊娠率

特にリスクを持たないカップルが適正なタイミングで性交渉を行った場合、1年間で7-8割が妊娠に至り、さらに2年間で9割を超えるカップルが妊娠すると言われています。しかしながら、年齢と妊娠率には非常に大きな相関を認めます。下に示す図は不妊治療を行った際の、妊娠率と流産率を表しています。

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特に注目したいのが、赤い線です。この線は子宮内に胚移植をした際に、妊娠した率を年齢別に示したものですが、30歳までは一回の胚移植で妊娠する確率が35%を超えているにも関わらず、35歳を超えてからは妊娠率が極端に低下し45歳に至っては約5%まで低下してしまいます。この様に妊娠率は年齢を経る毎に明らかに減少してしまうのです。しかし、例え高齢で妊娠に至ったとしても、完全に安心出来る訳ではありません。

年齢と流産率

流産は何らかの原因により、子宮内で胎児が発育しなくなる異常を指します。先ほどの図で示した通り、年齢を経る毎に妊娠率の低下とともに、流産率の上昇を認める様になります。一般的な流産率は約10-15%と説明している施設が多いのですが、高齢妊娠に至ってはその数字が必ずしも当てはまる訳ではなく、40歳を超えての妊娠では、流産率が20-30%まで上昇します。

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高齢になってから望む妊娠では、妊娠率の低下・流産率の上昇の大きな壁を乗り越えねばならない事がわかります。さらに高齢妊娠におけるもう一つの大きなリスクが存在します。

染色体異常のリスク

高齢妊娠に伴いさらに上昇する要素が、染色体異常のリスクです。染色体異常は、遺伝子を構成する染色体の本数や位置の異常を来す疾患で、代表的なものにダウン症が挙げられます。ダウン症の頻度だけを見ても、20歳において1/1667の確率に対し、35歳で1/385、40歳で1/106、45歳では1/30まで確率が上昇します。各年齢のダウン症及び染色体異常を持つ子が産まれる頻度を下に示します。

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この様に、現在の医療において不妊治療の技術が革新的な進歩をとげたにも関わらず、その技術は年齢の壁を乗り越える事ができたのか?をデータから検討すると、必ずしもそうとは言えない現状である事が分かります。

まとめ

高齢妊娠の際は、妊娠率の低下、流産率の上昇、染色体異常確率の上昇は避ける事が出来ない事実であり、現在の生殖補助医療技術を持ってしても、その問題を乗り越える事は未だできません。さらに子宮内膜症や子宮筋腫、甲状腺機能異常や膠原病疾患等、他の合併症を持つ方においては、さらにリスクが高くなります。その為妊娠を考える際は、自分の年齢と妊娠計画について、十分な考慮が必要です。

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