今週末は子どもと遊ぼう。そう思ってたんだよ、俺だって。 / 第6話 side満のタイトル画像
公開 2018年02月23日  

今週末は子どもと遊ぼう。そう思ってたんだよ、俺だって。 / 第6話 side満(2ページ目)

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スタイリストの派遣会社・フリープランに務める満は、週明けの月曜日、出社すると社長に呼び出される。
高級クリーニング店として名が売れているララウのお直し業務をフリープランで請けるという新規事業を始めると語る社長からの話を聞き、断れないままマネージャー業務に加えて新規事業の担当をすることになった満は残業が続く日々になってしまう…。




   「………」

社長  「どうした?」

   「あー…息子が気管支炎になりました」

社長  「風邪ひいてたのか?」

   「いやー…正直、ここのところ忙しすぎて息子の寝顔しか見てないんです。奥さんともちゃんと話せてないし…」

社長  「だよなぁ…。負担が大きすぎるよな。でも大丈夫。安心しろ。満の負担を減らす方法はもう考えてあるから」

   「ほんとですか。」

社長  「…おー! グッドタイミング!」



出入り口の方を見た社長が大きな声を出して手を振る。誰だ? 気になって社長の視線の先を見ると、そこにはスラッと背の高いモデル体型の女性がいた。

サングラスを外し、前髪をかき上げ、おでこの上に乗せる。年齢は…40代だろうか。


社長は俺に「上野だ」と彼女を紹介した。上野…?



上野  「たかくん、それだけじゃ分かるわけないじゃん」

社長  「あー、それもそうか。じゃあ、起承転結でいくぞ」

上野  「待った待った! それ全然話まとまってないやつだから」



それ本人に言えるんだ。何者だこの人。



上野  「えーっと…」

   「あ、円田満です」

上野  「じゃあ、満くんでいいね。私は上野ゆうこ。ゆうこりんって呼んでね」

社長  「ゆうこりんってキャラじゃないだろ」

上野  「たかくん、うるさい」

社長  「たかくんもやめい! 社長と呼べ」

上野  「はいはい。社長ね。えーっと、私はね。社長とフリープランを立ち上げた者です」

   「…あー、初代のマネージャー上野さん」

上野  「あはははは! 初代。じゃあ満くんは三代目ジェイソール」

社長  「やめい!」



北野の熱のあとは、バブル時代を知ってる二人のテンションに付き合うのか…。俺、がんばれ…。


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上野  「ある程度、知ってると思うけど、えーっと1994年だっけ?」

社長  「うん」

上野  「その頃、私はスタイリストで、たかくんはセレクトショップやってって」

社長  「社長ね」

上野  「はいはい。なんか息が合って、フリープランを立ち上げたの」

   「あー、はい」

上野  「で、えーっと2001年かな? 私が出来婚で会社を辞めて、二代目マネージャーの…誰だっけ?」

社長  「田所」

上野  「そーそー! 田所。あいつ、たかくんと大げんかして辞めたんだよね」

社長  「うん」

上野  「で、今の三代目が満くんなわけ」

   「なるほどー…」



それで…今日は何かお話が…? 俺の沈黙を察してか、社長が「それでだ」と言って体勢を整える。



社長  「上野の娘ももう…16?」

上野  「うん、高1」

   「…そんなに大きなお子さんがいらっしゃるんですね」

上野  「あはは! 見えないでしょ!」

社長  「こいつ、俺と同い年だから」

   「え!」

上野  「いいわー、その反応。若返るわ。こう見えて、52歳でーちゅ」



初めてリアルで見た。美魔女…。



社長  「で、手が離れつつあるから、復帰してもらおうと思ってる」

   「…あー」

上野  「うちの旦那、フリーランスだから家にいるのよ。だから、まぁ復帰できなくもないかなと思ってね。満くんは? 結婚してる?」

   「あー、はい。3歳の息子がいます」

上野  「わー、それなのに休日出勤させられてるんだー。ブラックー」

社長  「だからお前を呼んだんだろ? 上野にマネージャー業務をやってもらったら、満はララウとのお直し業務に専念できるだろ」

上野  「それなら定時で帰れるんじゃない? ホワイトー」

社長  「これから上野と打ち合わせするから満は帰っていいぞ。あー、リメイクの件はララウの担当者に報告な」


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わーわー話している二人を置いて、俺は店を出た。

ん? …んん? …マネジメントは上野さんが担当。俺はお直し業務担当。…それって俺、ぜんぜんスタイリングに関係ない仕事になっちゃったってこと?

駅に向かってあるきながらララウの担当者に電話をかける。



住田  「なるほど。良い提案だとは思うんですが、うーん。リメイク、となるとお客様とすり合わせがかなり必要になりますよね。うちのお客様はクリーニングに出される品が、高級品が多いので、それを扱った大胆なリメイクだと…フリープラン側がお客様との打ち合わせをしっかりして下さるのならいいかもしれません」

   「……分かりました」

住田  「それと作業場については…」

   「あー、不動産屋からの内見の日時待ちです」

住田  「了解です」



電話を切ると、俺は大きなため息を吐き、近くの自販機で缶コーヒーを買った。あぁ、いつもの癖だ。もうコーヒーは飲みたくないくせに。

――プルルルル

今度は「白金不動産」と表示されている。



不動産屋「白金台マンションの505号室の内見なんですが、明日の10時なら可能ですがどうしますか?」

   「明日はちょっと…」

不動産屋「他のお客さんからも内見の申し込みが来ているので、早めに見られた方がいいかと思いますよ」

   「あー…わかりました。じゃあ明日行きます」



まさかの明日も休日出勤。奏太もキリも怒るだろうな。…というか、キリに返信してなかった。

慌ててメッセを打とうとすると今度は着信が入った。

電話を掛けてきたのは、ぜんぜん仕事をしていないアシスタント「黒沢」だった――。


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▶︎▶︎ 次回、第7話は、2/27(火)20時公開予定!

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※ この記事は2024年03月24日に再公開された記事です。

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