はじめての妊娠、出産をして
母になることを考えたとき、
いわゆる「一般的な母親像」で
自分を上書きされるようで不安だった。
誰でも産んだら「母親っぽく」なれるのか?
ならなければいけないのか?
私は、私のままで、
「無理のないお母さん」になりたい。
私は、結婚して数年のあいだ、
妊娠しないようにしていた。
周囲から子どもについての
計画を聞かれると、表向きは
「転職したばかりだから、
仕事に慣れるまではしばらく妊娠しない」
と答えていたけれど、実際のところは
なかなか覚悟が決まらなかったからだ。
覚悟というのは、母親になる覚悟。
「私、なんとかお母さんやれそう」という
手ごたえや見通し、自信。
そういうものがなかなか得られなくて、
どうしたら得られるのかわからなくて、
長らく「妊娠を試みる」というステップへ
移ることができなかった。
私が母親になることに
ハードルを感じていた理由のひとつは、
いわゆる「お母さん」のイメージと
自分自身とがずれているということだった。
子どもの頃から絵本やアニメ、CMなどに出てくる
たくさんの「お母さん」たちを
目にすることによって
私の中に刷り込まれた母親像。
彼女たちはいつも優しく微笑んでいるけれど、
お母さん自身の趣味や好きなものが
描かれることはあまりない。
家族をケアすることは常に、
お母さん自身の都合よりも
優先されているように見えた。
専業主婦でいつも家族のために
心を配ってくれた私自身の母の姿も、
「お母さん=献身的」という
私の中のイメージに影響していると思う。
こういう
「家族や子どものことを第一に考えるお母さん」
というのは慣れ親しんだ存在であったけれど、
私自身の意識としては
いつまでたっても「自分が子ども」のままだった。
自分がその「お母さん」という立場になって、
自分より誰かのことを優先して、
ときにはやりたいことも我慢して
この先十数年生きていくなんて、想像できない。