子育てをしていると、自分の子育ての仕方が悪かったのだろうかと、思い悩むことが何度もあるものです。
例えば、すぐに手を出してしまう子。
乳幼児期は、他の子への関心から、友達にすぐ手を出してしまう子はたくさんいます。
そうした子どもは、地域の子育て支援センターなどに行っても、すぐに手を出してしまうので、親はずっと目を離せません。他の親への気遣いもあり、一日いるとくたくたになってしまいます。
また、保育園などに預けている場合でも、「今日、○○ちゃんにかみつきました」と、保育者から伝えられることがあります。
親としては、かみつかれた子の親にどう謝ったらいいのだろうか、私のしつけ方が悪いのかと、思い悩み、苦しむことも少なくありません。何とも、やるせない思いに駆られます。
そして、「なぜうちの子だけがこんなにうまくいかないの?」と、絶望的な気持ちになることもあるでしょう。
そうした子育ての悩みは、手を出したり、友達とのトラブルが多い子だけでなく、引っ込み思案な子、食べない子、飲まない子、体の弱い子、言葉の出るのが遅い子など、実にさまざまです。
わが家も大変な時期がありました。
朝の登園をぐずるのです。親としては、毎日がイライラ。「こんなはずじゃなかった」の連続です。
その日は遠足でした。
「行かない」と、ぐずるわが子。どうにか気持ちを立て直し、パジャマのまま車に乗せて、遠足の待ち合わせ場所に到着しました。パジャマ姿のわが子を見て、保育者は笑顔でこう言いました。
「○○ちゃん、よく来てくれたね。パジャマでOKよ。パパもよくがんばったね」と。
この温かい言葉にどれほど救われたことでしょう。
この時思い出したのは、カナダの「Nobody's Perfect(ノーバディズ・パーフェクト)」の有名な一文です。
「完璧な人はいません。完璧な親もいなければ、完璧な子どももいないのです。私たちにできるのは最善をつくすことだけであり、時には助けてもらうことも必要なのです。」
親も子もみんな、十分がんばっています。
周囲の人たちがみんな、このようなまなざしで困っている親子に声をかけてくれたら、どれほど救われるかと思います。
カナダでは、困っている親子の視点に立ち、さまざまな子育て支援プログラムが行われているのです。「ノーバディズ・パーフェクト」もその一つ。親の主体的なグループ学習プログラムであり、日本でもあちこちに広がっています。
子ども家庭リソースセンター 編、向田久美子 訳『ノーバディズ・パーフェクト シリーズ・PARENTS/親』4頁、ドメス出版、2002年
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