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イライラしすぎて夫と話したくない時、私はテレパシーで文句を言う。/連続小説 第3話

イライラしすぎて夫と話したくない時、私はテレパシーで文句を言う。/連続小説 第3話のタイトル画像

土曜日。急遽クライアントに謝罪しに行った満とケンゾーは仕事を終えると、料理教室までキリコと早智を迎えに行ったのだが……。


ベーグルが焼き上がり、

Bun'kitchenの店内は良い香りで満たされている。

生徒それぞれが作ったベーグルを店主が取り分け、

「Bun'kitchen」と黒色のスタンプが押された茶色の紙袋に入れていく。

生徒1 「美味しそう」

生徒2 「けっこう良くできたよね」

生徒三名がニコニコと話す中、早智は持参した分厚い本を開き、掲載されているベーグルの写真と自分の作ったベーグルを見比べている。

本からは、たくさんの付箋が飛び出ている。

早智  「…やや丸みが足りていないということは、形成の段階でもう少し…」

ぶつぶつ言っている早智の横で、自分のベーグルを待っていると、

奏太が私の足元に絡みつき、トレーナーの裾を引っ張ってくる。

奏太  「ママ~、べーぐ見せて。べーぐ」

キリコ 「分かったからちょっと待ってて。今もらうから座ってて」

自作の不恰好なベーグルを受け取っていると、Bun'kitchenのドアが開く。

そこには細身のシャツを着たケンゾーと、疲れた表情の夫・満が立っている。

早智、キャラ変

イライラしすぎて夫と話したくない時、私はテレパシーで文句を言う。/連続小説 第3話の画像1

早智  「あ、ケンちゃぁ~ん♡」

早智はケンゾーに気づくと、とろけるような声を出し、まるで跳ねるようにしてケンゾーに走り寄った。

キリコ 「………ほら、パパきたよ」

私の言葉でパパの存在に気づいた奏太は夫に駆け寄る。

奏太  「パパ~♡ べーぐ、つくったよ。べーぐ」

   「べーぐ? べーぐってなに?」

生徒1 「ベーグルです」

   「あー…」

(パパが仕事になったせいで、私のベーグルはイライラで変な形よ。まさに私のいまの精神状態を表したベーグルだよ。よーく見てほしいもんだね。)

夫に視線は送らず、怨念にも似たテレパシーを使って、夫に文句を送る。

ケンゾー「キリコさんは、ベーグル作りどうでした?」

不意にケンゾーに声を掛けられ、ハッとしてテレパシーを止める。

キリコ 「あー、うん。けっこう簡単だったよ。早智ちゃんは研究熱心だから、作り方とか調べてきてたみたいで、先生に『教える必要なさそうですね』って言われてたよ」

早智  「褒められちゃった♡」

キリコ 「…褒められてたのかな。うん、そうだね、褒められてた」

ケンゾー「さすがだね、さっちゃん!」

イライラしすぎて夫と話したくない時、私はテレパシーで文句を言う。/連続小説 第3話の画像2

私は無理やり口角を上げ、笑顔を作る。

さきほどまで怨念を送っていた割りにどうにか外面をキープできていると思う。

ケンゾー「じゃあ、さっちゃん帰ろうか」

ケンゾーは大きな手で早智の小さい…とは言えないやや大きな手を握る。

早智は頬を赤らめ、目の中に大きなハートを作ってケンゾーを見つめる。

早智  「うん♡」

ケンゾー「それじゃ」

ケンゾーが私と夫に頭を下げると、二人はラブラブなご様子で帰って行った。

キリコ 「……」

   「……」

私が無言で夫に近づくと夫は奏太を抱き上げ、

暗黙の了解で円田一家もBun'kitchenを出た。

イライラしすぎて夫と話したくない時、私はテレパシーで文句を言う。/連続小説 第3話の画像3
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さいとう美如

フリーライター。映像作家の岩井俊二に師事し、2005年にラジオドラマで脚本家デビュー。映画『虹の女神』、恋愛スマホゲーム『花婿ロワイヤル』、そのほか小説、漫画原...

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