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公開 2017年03月27日  

「すごいね」「えらいね」褒めるつもりが、ただの『評価』になっていませんか?

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書籍「いい親よりも大切なこと~子どものために“しなくていいこと"こんなにあった!~」(著:小竹めぐみ・小笠原舞)より、全7回にわたり、「親子がもっとハッピーになれるヒント」をご紹介します。第7回目は、「子どもの褒めかた」について。


ほめたことがアダとなる!?

ほめる子育てがよいという考え方があります。

「ほめて伸ばしましょう」という主張は、ごもっとも。子どもに、ポジティブな言葉をかけることはどんどん行ってほしいと思っています。

しかし、「ほめる」にも色々あります。

実は「ほめ方」によっては、子どもに逆効果をもたらすこともある……という落とし穴をあえてご紹介します。

保育園に勤めていた頃、「ほめるって難しい」と、保育士同士で話すことがありました。なぜなら、意外とバリエーションが少ないからです。

「すごい」「えらい」「うまい」だけに頼ってほめている人は、思いのほか多いのではないでしょうか。私たちはそれらの言葉だけでほめることを、あまりおすすめしていません。

よく知る保育園で、こんなやりとりがありました。

夕方、一斉保育で異なる年齢の子どもたちが数人集まっていたときのこと。

Tくんはそこにいた誰よりも上手に折り紙で手裏剣をつくれたので、ある先生が「すごい!」とほめました。そう言われたTくんは、翌日自分のクラスで、手裏剣がつくれない子のことを、「あいつは、すごくない。ぼくはすごい」と言っていました。

それまで、友だちに対して優劣をつける発言などしたことがなかったTくんだったのに……。


このエピソードは、大人として、色々考えさせられます。

子どもは素直です。
信頼する大人の言うことを信じます。

大人の何気ない「すごい」という発言を聞いて、大人の基準を子どもがそのまま取り入れてしまうことがあります。これは、よい面もありますが、危険性もある、という事例です。

ある高校生が、「親にほめられるために必死で勉強していた」と話してくれたことがありました。

「ほめられないと、自分が必要とされないのではないか、という不安がいつも心にあった」と思っていたそうです。他にもそういった声を多く聞きました。

大人の何気ない「ほめる」という行為が、子どもに大きな影響を与えることもあるのです。だからこそ、大人は何気ない一言の影響力を自覚し、ほめるときにも、どんな風に言ったらその子にとってよいだろう、と言葉を選ぶ必要があるのではないでしょうか。

ほめるよりも、認めてあげる

では、どうしたらいいのでしょう。それは、とってもシンプルです。

子どもの言動や喜怒哀楽を、そっくりそのまま認めてあげること。そこに自分の評価を挟まずに、「目の前の事実」を言葉にするだけでいいのです。


子どもがとても真剣に描いた絵があったとしましょう。「ほめたい!」と感じたあなたは、なんと声をかけますか?

思わず、「すごい!」「うまい!」と言いたくなると思いますが、焦らず言葉を選んでください。

先ほど伝えた通り、ぜひ、「目の前の事実」を言葉にしてあげてほしいのです。

「雲を大きく描いたね~!」「ずいぶん細かく描いてるね!」「このお花の色、ママ大好き!」と伝えてみる。子どもは「そうでしょ?」と言わんばかりに笑顔になると思います。それだけで、もう十分彼らは満足するのです。

子どもは、大雑把に「すごい!」とだけ言われるよりも、「あなたの太陽は、緑色なのね!」などと具体的に見てくれたことのほうが嬉しいのです。お話ができる年齢なら、太陽を緑色にした理由を聞けば、きっと答えてくれるでしょう。

「すごい!」「うまい!」では物足りない……という気持ちは、大人こそが知っているのではないでしょうか?頑張って時間をかけて料理を作ったとき、食べた人がどんなことを言ってくれたら嬉しいですか?

「うまい!」に加えて、「しっかり出汁がとってあるね」「今日はこのお皿に盛り付けたんだね」と、もう一声あったら、きちんと見てくれていると感じて嬉しいですよね。

このように、事実をそのまま認めるようなほめ方を続けていくと、自分なりの表現を楽しみ、自分らしさを大事にする子になります。

自分らしさは、人間にとってとても大切。

しかし、「自分らしくやってみて!!」と言葉で言われていきなりできるようなものではありません。

「ほめる」は、実は「認める」ということ。小さな頃からのひとつひとつの“認める”の積み重ねが、自分らしさをつくっていくのです。

そんな風に考えると、「ほめる」ことも立派なしつけのひとつであるということに、気づいて頂けるのではないでしょうか。



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